私は東京大学アイソトープセンター長の児玉ですが3月15日に大変に驚愕
いたしました
私ども東京大学には27か所のアイソトープセンターがあり放射線の防護と
その除染の責任を負っております それで、私自身は内科の医者でして東大
病院の放射線の除染などにずっと、数十年かかわっております
3月15日に、ここの図にちょっと書いてあるんですが 我々最初に午前9
時ごろ東海村で5μシーベルトという線量を経験しまして それを第10条
通報という文科省に直ちに通報いたしました その後東京で0,5μシーベ
ルトを超える線量が検出されました これは一過性に下がりまして 次は3
月22日に東京で雨が降り、0,2μシーベルト等の線量が降下し これが
今日に至るまで高い線量の原因になっていると思っています
それでこの時に枝野官房長官が 「さしあたって健康に問題はない」という
事をおっしゃいましたが 私はその時に実際はこれは大変な事になると思い
ました 何故かというと
現行の放射線の障害防止法というのは 高い線量の放射線物質が少しあるも
のを処理することを前提にしています この時は総量はあまり問題ではなく
て、個々の濃度が問題になります ところが今回の福島原発の事故というの
は 100キロメートル圏で5μシーベルト 200キロメートル圏で
0,5μシーベルト さらにそれを超えて足柄から静岡のお茶にまで及んで
いる事は 今日みなさん全てがご存じのとおりであります

我々が放射線障害を診る時には、総量をみます それでは東京電力と政府は
一体今回の福島原発の総量がどれくらいであるか はっきりした報告は全く
されておりません そこで私どもはアイソトープセンターのいろいろな知識
を基に計算してみますと まず、熱量からの計算では広島原爆の29,6個
分に相当するものが漏出しております ウラン換算では20個分の物が漏出
していると換算されます
さらに恐るべきことにはこれまでの治験で 原爆による放射線の残存量と原
発から放出された者の放射線の残存量は 一年に至って原爆が1000分の
一程度に低下するのに対して 原発からの放射線汚染物は10分の一程度に
しかならない つまり、今回の福島原発の問題はチェルノブイリと同様 原
爆数十個分に相当する量と原爆汚染よりもずっと多量の残存物を放出したと
いう事が まず考える前提になります
そうしますと、我々システム生物学というシステム論的にものを見るやり方
でやっているんですが 現行の総量が少ない場合にはある人にかかる濃度だ
けを見ればいいのです
しかしながら、総量が非常に膨大にありますと これは粒子です 粒子の拡
散は非線形という科学になりまして 我々の流体力学の計算でも最も難しい
ことになりますが 核燃料というのは要するに砂粒みたいなものが合成樹脂
みたいな物の中に埋め込まれています
これがメルトダウンして放出するとなると 細かい粒子が沢山放出されるよ
うになります
そうしたものが出てまいりますと、どういうようなことが起こるかが 今回
の稲藁の問題です
たとえば、岩手のふじわら町では稲藁57000ベクレル/kg    
宮城県のおおさき17000ベクレル/kg  
南相馬市10万6千ベクレル/kg   白河市97000ベクレル/kg  
岩手64000ベクレル/kg  ということで、この数字というのは決して
同心円上にはいかない どこでどういうふうに落ちているかは その時の天
候、それから、その物質がたとえば水を吸い上げたかどうか
それで、今回の場合も私は南相馬に毎週700q行って 東大のアイソトー
プセンター、現在まで7回の除染をやっておりますが 南相馬に最初に行っ
た時には1台のカウンターしかありません 農林省が通達を出したという3
月19日には 食料も水もガソリンも尽きようとして 南相馬市長が痛切な
訴えをウエブに流したのは広く知られているところであります そのような
事態の中で通達1枚出しても誰も見る事が出来ないし誰も知ることができま
せん 稲藁がそのような危険な状態にあるという事は全く農家は認識されて
いない 農家は飼料を外国から買って、何十万と負担を負って さらに、牛

にやる水は実際に自分たちと同じ地下水を与えるようにその日から変えてい
ます
そうすると、我々が見るのは 何をやらなければいけないかというと まず、
汚染地で徹底した測定が出来るようにするという事を保証しなくてはいけま
せん
我々が5月下旬に行った時先ほど申し上げたように1台しか南相馬に無かっ
たというけど
実際には米軍から20台の個人線量計がきていました しかし、その英文の
解説書を市役所の教育委員会で分からなくて 我々が行って教えてあげて実
際に使いだして初めて20個の測定が出来るようになっている これが現地
の状況です

そして先程から食品検査と言われていますが ゲルマニウムカウンターとい
うものではなしに 今日ではもっと、イメージングベースの測定器というの
が遥かに沢山、半導体で開発されています
何故政府はそれを全面的に応用してやろうとして全国に作るためにお金を使
わないのか
3か月経ってそのような事が全く行われていない事に 私は満身の怒りを表
明します

第2番目です 私の専門は小渕総理の時から内閣府の抗体医薬品の責任者で
して 今日では最先端研究支援というので30億円をかけて抗体医薬品にア
イソトープを付けて癌の治療にやる すなわち人間の体の中にアイソトープ
を打ち込むという仕事が私の仕事ですから 内部被曝問題に関して一番必死
に研究しております そこで内部被曝がどのように起きるかという問題を説
明させていただきます
内部被曝というものの一番大きな問題は癌です 癌がなぜ起こるかというと
DNAの切断を行います ただし、ご存じのとおりDNAというのは二重ら
せんですから 二重らせんの時は非常に安定的です これが、細胞分裂をす
る時には二重らせんが一本になって、2倍になり4本になります この過程
のところがものすごく危険です そのために、妊婦の胎児、それから幼い子
ども、成長期の増殖が盛んな細胞に対しては 放射線障害は非常な危険をも
ちます さらに大人においても増殖が盛んな細胞 たとえば放射性物質を与
えると髪の毛 それから貧血、それから腸管上皮の これらはいずれも増殖
分裂が盛んな細胞でして そういうところが放射線障害のイロハになります

それで私どもが内部に与えた場合に具体的に起こるので知っている事例を上
げます
これは実際には一つの遺伝子の変異では癌は起こりません 最初の放射線の
ヒットが起こった後にもう1個の別の要因で癌の変異が起こるという事 こ
れはドライバーミューテーションとかパッセンジャーミューテーションとか
細かい事になりますが それは参考の文献を後ろに付けてありますので そ
れを後で、チェルノブイリの場合やセシウムの場合を挙げてありますので 
それを見ていただきますが まず一番有名なのはα―線です
プルトニウムを飲んでも大丈夫という東大教授がいるというのを聞いて、私
はびっくりしましたが α―線はもっとも危険な物質であります それは 
トロトラスト肝障害というので私ども肝臓医はすごくよく知っております 
ようするに内部被曝というのは先程から一般的に何ミリシーベルトという形
で言われていますが そういうものは全く意味がありません
I131は甲状腺に集まります トロトラストは肝臓に集まります セシウ
ムは尿管上皮、膀胱に集まります これらの体内の集積点をみなければ全身
をいくらホールボディースキャンやっても全く意味がありません
トロトラストの場合の、このちょっと小さい数字なんで大きい方は後で見て
欲しいんですが これは実際に、トロトラストというのは造影剤でして 
1890年からドイツで用いられ1930年ごろからは日本でも用いられま
したが その後20〜30年経つと肝臓がんが25%から30%に起こると
いう事がわかってまいりました
最初のが出てくるまで20年というのは何故かというと 最初にこのトロト
ラスト、α―線核種なんですが α―線は近隣の細胞を傷害します その時
に一番やられるのはP53という遺伝子です 我々は今ゲノム科学というの
で、人の遺伝子、全部配列を知っていますが 一人の人間と別の人間は大体
300万箇所違います ですから人間同じとしてやるような処理は今日では
全く意味がありません いわゆるパーソナルライフメディスンというやり方
で放射線の内部障害をみる時も どの遺伝子がやられて、どういう風な変化

が起こっているかという事をみるということが 原則的な考え方として大事
です
トロトラストの場合は第一段階ではP53の遺伝子がやられて それに次ぐ
第二第三の変異が起こるのが20〜30年後かかり そこで肝臓がんや白血
病が起こってくるという事が証明されております
次にヨウ素131 これヨウ素はみなさんご存じのとおり甲状腺に集まりま
すが 甲状腺への集積は成長期の甲状腺形成期が最も特徴的であり小児にお
こります  しかしながら1991年に最初ウクライナの学者が「甲状腺が
んが多発している」というときに 日本やアメリカの研究者はネイチャーに
「これは因果関係が分からない」ということを投稿しております 何故そん
な事を言ったかというと1986年以前のデータがないから 統計学的に優
位だという事を言えないということです しかし、統計学的に優位だという
事がわかったのは 先程も長瀧先生からお話しがありましたが20年後です
 20年後に何がわかったかというと 86年から起こったピークが消えた
ために これは過去のデータが無くても因果関係があるという事がエビデン
ス(evidence 証拠・根拠)になった
ですから、疫学的証明というのは非常に難しくて 全部の事例が終わるまで
大体証明できないです
ですから今 我々に求められている 「子どもを守る」という観点からは全
く違った方法が求められます そこで今行われているのは ここには国立の
バイオアッセイ研究センターという化学物質の効果をみる福島昭治先生とい
う方が ずっとチェルノブイリの尿路系に集まる物を検討されていまして 
福島先生たちがウクライナの医師と相談、集めて
500例以上の、前立腺肥大の時に手術をしますと、膀胱もとれてきます
これをみまして検索したところ 高濃度汚染地区、尿中に6ベクレル/?と
いう微量ですが
その地域ではP53の変異が非常に増えていて しかも、増殖性のぜん癌
状態 我々からみますとP38というMAPキナーゼと NF-κB(エヌエフ・
カッパー・ビー)というシグナルが活性化されているんですが それによ
る増殖性の膀胱炎というのが必発でありまして かなりの率に上皮内のが
んができているという事が報告されております
それで、この量に愕然といたしましたのは 福島の母親の母乳から2〜
13ベクレル
7名で検出されているという事が既に報告されている事であります

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我々アイソトープ総合センターでは 現在まで毎週700キロメートル、
大体一回4人づつの所員を派遣しまして南相馬市の除染に協力しておりま
す 南相馬でも起こっている事は全くそうでして 20K30Kという分
け方が全然意味がなくて その幼稚園ごとに細かく測っていかないと 
全然ダメです  それで現在20Kから30K圏にバスをたてて1700
人の子どもが行っていますが 実際には避難 その、南相馬で中心地区は
海側で学校の7割で比較的線量は低いです  ところが30キロ地点の飯
館村に近い方の学校にスクールバスで毎日100万円かけて 子どもが強
制的に移動させられています
このような事態は一刻も早く辞めさせてください
いま、その一番の障害になっているのは、強制避難でないと保証しない 
参議院のこの前の委員会で当時の東電の清水社長と海江田経済産業大臣が
そういう答弁を行っていますが
これは分けて下さい 保障問題とこの線引きの問題と子どもの問題は直ち
に分けて下さい
子どもを守るために全力を尽くすことをぜひお願いします
それからもう一つは 現地でやっていますと除染というものの緊急避難的
除染と公共的除染をはっきり分けて考えていただきたい
緊急避難的除染を我々もかなりやっております たとえばここの図表に出
ておりますこの滑り台の下 滑り台の下は小さい子が手をつくところです
が、この滑り台に雨水がザーッと流れてきますと 毎回濃縮します 右側
と左側とズレがあって、片側に集まっていますと 平均線量1μのところ
だと10μ以上の線量が出てきます それで、こういうところの除染は緊
急にどんどんやらなくてはいけません
それからさまざまな苔が生えているような雨どいの下 ここも実際に子ど
もが手をついたりしているところなのですが そういうところは、たとえ
ば高圧洗浄機を持って行って苔を払うと 2μシーベルトが0,5μシー
ベルトまでになります だけれども、0,5μシーベルト以下にするのは
非常に難しいです それは、建物すべて、樹木すべて、地域すべてが汚染
されていますと 空間線量として1か所だけ洗っても全体をやる事は非常
に難しいです ですから、除染を本当にやるという時に いったいどれだ
けの問題がありどれ位のコストがかかるかという事を、イタイイタイ病の
一例で挙げますと カドミウム汚染地域、だいたい3000ヘクタールな
んですが そのうち1500ヘクタールまで現在除染の国費が8000億
円投入されております もし、この1000倍という事になれば、いった
いどのくらいの国費の投入が必要になるのか ですから私は4つの事を緊
急に提案したいと思います

第1に 国策として、食品、土壌、水を、日本が持っている最新鋭のイメ
ージングなどを用いた機器を用いて もう、半導体のイメージかは簡単で
す イメージ化にして流れ作業にしてシャットしていってやるということ
の最新鋭の危機を投入して 抜本的に改善して下さい これは今の日本の
科学技術力で全く可能です

2番目 緊急に子どもの被ばくを減少させるために新しい法律を制定して
下さい
私のやっている、現在やっているのはすべて法律違反です 現在の障害防
止法では各施設で扱える放射線量、核種等は決められています 東大の
27のいろんなセンターを動員して現在南相馬の支援を行っていますが 
多くの施設はセシウムの使用権限など得ておりません 車で運搬するのも
違反です しかしながら、お母さんや先生方に高線量の物を渡してくる訳
にもいきませんから 今の東大の除染ではすべてのものをドラム缶に詰め
て東京に持って帰ってきております 受け入れも法律違反 全て法律違反
です このような状態を放置しているのは国会の責任であります  全国
には 例えば国立大学のアイソトープセンターは ゲルマニウムをはじめ
最新鋭の機種を持っているところは沢山あります そういうところが手足
を縛られたままでどうやって国民の総力を挙げて子どもが守れるのでしょ
うか これは国会の完全なる怠慢であります

第3番目 国策として土壌汚染を除染する技術を民間の力を結集して下さ
い これは、たとえば 東レだとかクリタだとかさまざまな化学メーカー
 千代田テクノとかアトックスというような放射線除去メーカー それか
ら竹中工務店とか様々なところは、放射線の除染などに対してさまざまな
ノウハウを持っています こういうものを結集して現地に直ちに除染研究
センターを作って 実際に何10兆円という金額がかかるのを いまだと
利権がらみの公共事業になりかねない危惧を私はすごく持っております 
国の財政事情を考えたらそんな余裕は一瞬もありません どうやって除染
を本当にやるか 7万人の人が自宅を離れてさまよっている時に 国会は
一体何をやっているのですか
以上です

 
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